毒と私

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概要:
毒と私, 幻冬舎, 由井寅子著

20「いらん子」と呼ばれて私が生まれた地は愛媛県の瀬戸町という田舎の小さな村です。日本地図で四国のページを開くと、北西に位置する愛媛県の西端に、手でつまむとぽっきりと折れそうなほどに細長く伸びた半島があります。国定公園であるこの佐田岬半島の真ん中に位置していたのが私の生まれ故郷である瀬戸町です。厳しい環境でしたが、美しいだんだん畑の日本の風景があり、自然と人間が共存して生きていました。2005年に瀬戸町は、半島の根元にあった旧・伊方町、半島の先端にあった三崎町と三町が合併して、新たに半島全域をカバーする伊方町の一部となりましたが、当時は、半島の付け根にある八幡浜市から車で何時間もかかるような陸の孤島でした。鉄道も高速道路もなく、国道197号線は「行1く9な7(197)街道」とあだながついたほどのクネクネ道でした。バスがカーブを曲がるときには、車体の前半分ほどが道からはみ出して落っこちそうになるくらいで、とてもじゃありませんがバスの前方には乗れませんでした。にもかかわらず、当時は電車がなかったためにバス便と船が主要交通手段で、しかもバスは1日に3本、船は朝と夕しかありませんでした。