毒と私

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概要:
毒と私, 幻冬舎, 由井寅子著

21 第1 章苦しみをのみ込むな!私の生年は1953年です。日本国中が今よりもずっと貧乏でしたが、佐田岬半島のような僻地は、なかでも特に貧しかったと思います。農業が主な生活手段ですが、半島全体が山脈となっているために農地もほとんどありません。かろうじて山を切り開いただんだん畑で、ミカンや芋を育てることができたほどです。山の麓が、すぐ浜になっているような地形でした。瀬戸町には、医者もいませんでした。小さい頃の私は、鎌で麦を刈っていて指を切りつけたとき、石で叩いて汁を出したよもぎを傷口につけて治していました。傷はじきにしっかりとくっつきました。そのたびに自分の治る力は強いなあと思いました。なにせ無医村ですから、どうすれば治るかを自然に知っていくのです。子どもたちは多くの薬草を使いこなしていました。ちなみに同一の町となった旧・伊方町には四国電力の原発である伊方発電所がありました。70年代に1号機が作られ、現在では合計3機で四国全体の電力の四割以上を賄っています。合併によって私の生地も原発の町となってしまいました。それも、町が貧しかったからだと思います。福島原発のある大熊町、双葉町もそうかもしれませんが、リスクを承知で、原発でも誘致しなければ豊かになれない町もあるのです。伊方町に原発ができたときには、賛成派と反対派で町がまっぷたつに分断されて、最終的