毒と私

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概要:
毒と私, 幻冬舎, 由井寅子著

23 第1 章苦しみをのみ込むな!寅義で、父の代わりに生まれてきた子ということで、私は寅子と名づけられました。けれど、私は子どもの頃、ずっと母や祖母や兄たちから、「おまえはいらん子だったのに生まれてきた」と言われ続けてきました。私は何とかして母に気に入られよう、必要な子になろうとして、必死に努力をしてきました。それでも、やはりあまり愛されているとは思えませんでした。母は一家の家計を支えるために、私を産んだ直後から働き始めていました。朝7時に山の畑に出かけて、夜7時に帰ってくるのですが、その間、私は何も食べるものがありません。粉ミルクなんてぜいたく品もありませんから、白湯だけを与えられて母の帰りを待っています。夜になって母が帰ってくると、私はお乳にむしゃぶりつきます。もうお腹がぺこぺこなので一度吸いついたらいつまでも離さないのです。お乳をあまり与えられなかったために、私は乳離れが遅くなりました。離乳食が食べられるような月齢になっても、いつまでもおっぱいを飲んでいました。困った母は、芥子をお乳に塗ったそうです。芥子を塗られて、もちろん辛いのですが、それでも私はお乳から離れませんでした。5、6歳になった頃、一緒に住んでいた祖母に「私ってどんな赤ちゃんだったの?」と聞いたことがありました。祖母は笑いながら「おまえはタコじゃった」と答えました。芥子を