毒と私

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概要:
毒と私, 幻冬舎, 由井寅子著

24お乳に塗られていたせいもあるのでしょうが、いつも顔をかきむしって、顔がまっかだったことを、祖母は「タコ」と表現したのです。「タコは自分自身の足を食べてしまうじゃろ。おまえも自分の顔を傷つけているから、余計にタコにそっくりじゃ」と笑われ、幼かった私はいたく傷つきました。普通、おばあちゃんが孫に向かって「タコ」なんて言うでしょうか?それを聞いた私は、またまっかになって怒りました。いま振り返ると、「ああ、やっぱり自分は愛されてなかったんだな」と感じます。いずれにせよ、このような環境下で育った私には、常に無力感と自己卑下の態度がついて回ることになりました。「母」という人私は母から愛情を受けたいと願っていましたが、とうとう最後まで私の望むような愛は得られませんでした。愛されてはいませんでしたが、私は母のことが大好きでした。母は不憫な人でした。いつも自分の人生を恨んでいました。人生は苦しいもので、「二度と生まれてきたくない」とこぼしていたほどです。祖母もまた同じでした。2人とも、田舎で貧乏人の女性として生きることが辛かったのだと思います。