Fili 〔2001・09〕  ホメオパシーとジャンショートン氏の元素のレメディー! 

Fili 9月号
ホメオパシーとジャンショートン氏の元素のレメディー
文:小笠原英晃

昨年11月、ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー(由井寅子学長)の招きにより、オランダのホメオパス(ホメオパシー療法家)ジャン・ショートン氏が来日しました。ジャン氏は、元素のレメディーを体系化した革新的なホメオパスとして、世界的に著名な人物。由井学長とは、イギリス時代から親交のあるすぐれた療法家です。日本人初の英国認定ホメオパスである、由井さんの普及活動により、日本でも徐々に話題を集めるようになったホメオパシーと、ジャン氏の元素レメディーの特徴について、簡単にご紹介致したいと思います。 ホメオパシーとは何か ホメオパシーは、動物や植物などのさまざまな物質の特性を、サトルエネルギー(従来の科学的な測定では検出不能な精妙なエネルギー)レベルで記憶させた水を使ったレメディーを用います。 通常、ホメオパスが、クライアントの心身の症状を細かく観察、分析したうえで、その症状を引き起こしている原因に対応(共鳴)するレメディーを与えます。 すると、クライアントは、レメディーを体内に取り込むことによって、症状を引き起こしているパターンと同調・共鳴し、その結果、心身において自らの気づきがおこると同時に、内なるセンサーが反応し、自然治癒力が引き出され、症状が治まる、というわけです。 そのような作用を及ぼすホメオパシーのレメディーは、これまで200年以上にわたる各国での歴史的検証を経て、人体に有効に作用し、副作用がないことが確かめられており(好転反応は認められる)、近代医学に並ぶ信頼性の高い実用的な自然療法としてヨーロッパやインドを始め世界中で高い評価を得ています。

1790年にサミュエル・ハーネマン博士が発見した「ある症状を引き起こすものは、その症状を治すことができる」という『同種の法則』をベースに、これまでさまざまなホメオパスや研究家たちが、レメディーの追試や開発を試みてきました。そうして出来上がったものが、「マテリア・メディカ」と「レパートリー」と呼ばれるもので、そこには、レメディーが引き起こしえる膨大な症状と、何万という症状に対応する数千種類のレメディーの特徴が記載されているのです。ホメオパシーを学ぶうえで必要不可欠な基礎文献であると同時に、修得するのには極めて難解な学習教材でもあります。

元素周期表の新解釈と体系化に成功したジャン氏 ホメオパスであり、医師でもあるジャン・ショートン氏は、その複雑多岐にわたる「マテリア・メディカ」を読み解く『鍵』として、元素の働きに注目し、1987年に元素のレメディーと症状の体系的な解釈に成功しました。つまり、ジャン氏は、それまでホメオパスが経験的に使ってきた元素で作られた数種類のレメディーを、全く新しい観点で捉え直し、さらに多くの元素レメディーと組合せながら、系統立てて用いたフロンティア・ホメオパスなのです。

では、なぜ彼は元素に着目したのでしょうか? 私たちの体は、主に、水、タンパク質、脂質、炭水化物から構成されており、それらは、主に、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の4元素から成り立っています。そして、その体を維持していくためには、カルシウムやナトリウム、マグネシウムなどのミネラルを必要としますが、結局、それら全ては電子の数に対応した原子の一つです(「元素長周期表」参照)。
化学者でもあるジャン氏にとって、「元素周期表」は極めて身近なデータベースでした。さらに、ジャン氏は、ホメオパスとして、ハーネマン以降使われてきた元素のレメディー(金、ヒ素、鉄、硫黄など)が、さまざまな精神的症状や、肉体的症状に絶大な効果をあげている事実も目の当たりにしており、常に納得のいく理由を追い求めていました。

ある時、ジャン氏は、私たちの体にとって必要不可欠な構成要素が記録された「元素周期表」そのものに、その謎を解く鍵があるのではないかと考えたのです。 そこで、生化学的な観点に加えて、ホメオパシー的な観点から多角的に解析していった結果、ついに、そこにある法則性があることを発見したのです。 周期表に隠されていた元素の秘密と法則性 それは、周期表は、垂直方向の7つの要素【シリーズ】と、水平方向の18の要素【段階】で構成されており、第1から第7シリーズには、[肉体化]から[内的な進化]に至る各々のテーマが、そして、第1から第18段階までは、「始まり」から「休息」までの各々のステージがあること、さらに、1から2、3へとステージがらせん状に連なりながら変化していく、ということに気づいたのです。

要するに、垂直軸のシリーズは、各元素の機質(構造)を表し、水平軸の段階は機能(働き)を表しているともいえるようです。このような解釈は全くオリジナルで、元素を構成している特定のエネルギー(サトルエネルギー)が、それぞれ発生から消滅に向けて、徐々にステップアップしながら進化・流転しているということを「元素周期表」に基づいてジャン氏が演繹的に導き出したものなのです。 垂直軸の各シリーズのテーマ(表参照)は、次のようなキーワードでまとめられます。

■第1「存在」
■第2「個人的な成長」
■第3「他者との関係性」
■第4「社会的な任務」
■第5「創造的なアイディア」
■第6「権力」
■第7「霊的な直感」

これらは、これまで生体エネルギーの研究者たちによって提唱されてきたオーラやチャクラと相通じるものがあり、ジャン氏自身は関連付けて研究しているわけではありませんが、物質レベルからアストラルレベルまでの7つのエネルギーの階層構造と各々の特性がほぼ一致している点は非常に興味深い点だといえるでしょう。 次に、水平軸の各段階の特徴は、以下のようなキーワードで表現できます。

■第1段階(水素)「衝動的・一体感」
■第2段階(ベリリウム)「観察・適応」
■第3段階(スカンジニウム)「私的行動・変化」
■第4段階(チタン)「公的行動・疑問」
■第5段階(バナジウム)「準備段階・提案」
■第6段階(クロム)「チャレンジ・証明」
■第7段階(マンガン)「拡大・協力」
■第8段階(鉄)「忍耐・集中」
■第9段階(コバルト)「仕上げ・微調整」
■第10段階(ニッケル)「成功・自信」
■第11段階(銅)「キープ・楽しむ」
■第12段階(亜鉛)「衰退化・分解」
■第13段階(ホウ素)「最小限の維持・哀愁」
■第14段階(炭素)「形式・責任転嫁」
■第15段階(窒素)「喪失・明け渡す」
■第16段階(酸素)「空想・安堵感」
■第17段階(フッ素)「終結・手放す」
■第18段階(ヘリウム)「無感覚・自由」

これらは、一見すると、発生から死に至る万物の生命周期を表しているかのようでもあり、あるいは、ミクロとマクロの相似性から、人間の一生から文明の栄枯盛衰に至るらせん状に進化する、宇宙の法則だと拡大解釈することもできるかもしれません。 いずれにしても、ジャン氏が発見した「元素周期表」に隠された法則性は、いみじくも複雑多岐にわたるホメオパシーの「症状/レメディー」の分類と理解に大いに役立ちました。なぜなら、それまでのように、症状と元素レメディーをただ単純に結びつけるのではなく、元素の特徴を体系的に理解することで、症状を起こしている原因や、そのクライアントが置かれている社会的な状況、さらに、今後のテーマなどが総合的に理解でき、また潜在的な傾向も読み解くことができるようになったからです。勿論、逆に、クライアントが置かれている職場や家庭での立場や本人の性格、また心身の状態から元素の特徴と合致するパターンを類推し、対応する元素レメディーを与えることもできるわけです。

例えば、クライアントが抱えている問題が、リーダーシップや壮年期特有の問題である場合は、金に代表される第6シリーズの特徴だということが予想され、その場合には、関連する器官が目なので、目に問題はないかを探ることによって、クライアントの状態をより正確に知ることができます。そして、プライドがネックになっているようなら、そのエネルギーと共鳴する金のレメディーを与え、その反応をみればよいわけです。 自閉症児に対応する元素レメディー ジャン氏の体験からもう一つ、自閉症児の例をあげましょう。

自閉症のために特殊学級に入っている女の子(3歳)がみごと回復したケースです。 ジャン氏は、まずその女の子との第1回目のセッションで、彼女の自閉傾向は「自己が存在すべきか存在せざるべきか」という元素の第1(水素)シリーズの第18段階であるヘリウム(He)のテーマと符合していることを確認します。 このシリーズは、これから物質化していく最終段階にあたり、まだ宇宙との一体感をもっているために、肉体に留まっていたくない、という状態です。 そこで、ジャン氏は、彼女にヘリウム(He)のレメディーを与えて様子をみました。2度目のセッションの時には、彼女は他の子供たちと遊びたがるようになっており、自閉症特有の症状は少なくなっていました。そして、次に内面に隠れていた感情が表面化してきていたのです。 そこで、「私は皆からバカにされている」という感情と対応する第6シリーズ第2段階のバリウム(Ba)のレメディーを与えました。すると、3度目のセッションでは、バカにされているという感情は改善され、次に、学校の先生から受ける質問に対してオウム返しするというパターンが出てきました。そのパターンは、第4シリーズ第12段階の亜鉛(Zn)のテーマと合致するので、亜鉛(Zn)のレメディーを与えました。 4度目に彼女がジャン氏のもとを訪れた時には、集中力が増し、先生の質問にもちゃんと答えられるようになり、アルファベットも学べるほどに成長していたのです。

今日、このようなケースは他のホメオパスによっても数多く報告されており、決して珍しいケースではありません。 それまでは、深い悲しみには岩塩、死への恐怖には砒素、虚弱にはケイ素、などと定番的な元素レメディーが用いられてきていたものが、ジャン氏の「元素周期表」の新解釈と体系化によって、さまざま症状に応じた多様な組合せができるようになり、さらに広範囲に応用できるようになったのです。 元素を構成する特定のエネルギーパターンと、さまざまな感情エネルギー、そして、その結果引き起こされる心身の症状が互いに対応し、共鳴しあう……その事実が、ジャン・ショートン氏によって裏付けられたことは、ポメオパシーの普及だけでなく、錬金術以降分断されてきた科学と神秘学の発展的融合、そして、新しい時代のホリスティックな総合医療の構築に向けて、非常に画期的な出来事だと言えるでしょう。

最後に、由井寅子学長が「日本ホメオパシー医学協会第2回コングレンス」 にて、発表されたケースの中から元素レメディーを用いた例をご紹介しましょう。

■元素レメディーで症状が好転した例(一部)

@自己存在を否定する女性(26歳)のケース
主訴:色々な外的影響を受けやすく、すぐ疲れてしまう。 胸がドキドキしてベッドから出られない。「常に膨張する感じで、自分が宇宙のチリとなってしまうのでは」と恐怖している。自分の存在がどこにあるかわからない。引きこもりなど。
■元素レメディー:Hydrogen(水素) 他の対応レメディー:Cannabis-indica

Aアトピーの女性(35歳)のケース
主訴:自分の体は因幡の白兎のように皮を引き剥かれ、赤ムケになっている。「私が何をしたというの?」「なぜ私はこのようなアトピーで苦しまなければならないの?」「人は私をせせら笑っている」「皆私から全ての幸せを剥ぎ取っていく」「人は私にひどいことばかりする」と思っている。
■元素レメディー:Oxygen(酸素) 他の対応レメディー:Staph、Hyos

B過食に走る人のケース
主訴:中毒症(過食・酒中毒・タバコ中毒・セックス中毒など) 「私は食べるのを止めなくてはならないのに止められない」「仕事をしなければならないのにできない」「頑張っているのに失敗した」「心の内でいつも葛藤していて前に進めない」「又失敗するんじゃないか、私ってダメね、」と思うなど、2つの自己がある場合。
■元素レメディー:Vanadium(バナジウム)他の対応レメディー:Anac、Ign、Carc

C山を制覇しようとする人のケース
主訴:凍傷や大ケガをしても山に登り続けようとする人(山登りを楽しもうというよりは制覇したい)「必ず山頂に登りつめるぞ」と思う。「成せば成る、成さねば成らぬ、何事も」「心頭滅却すれば火もまた涼し」と思っている。
■元素レメディー:Tungsten(タングステン)
潰瘍性大腸炎のほとんど喋らない男性が、タングステンを飲んで徐々に症状が緩和しつつあった頃、昔雷に打たれたことがあったのを想い出し、Phosphorusを与えたところ、よく喋るようになり、山登りを楽しめるようになった(本来の自分に戻った)。

■ジャン・ショートン氏プロフィール
元素のレメディーを体系化したオランダの革新的ホメオパス。1951年生まれ。
化学と哲学を専攻し、修得する。1983年から鍼灸とホメオパシーを本格的に学び修得する。1986年から本格的にホメオパシー療法を実践する傍ら、著名なホメオパスたちと交流し、研究を重ねる。1988年にオランダのユトレイヒトにホメオパシーセンターを設立。現在、10名のホメオパスたちと共に精力的に研究活動を続けている。ジャン氏が体系的に理論化した元素レメディーは、ハーネマン以来の大発見として高い評価を得ている。