気の森 〔2002・10〕  由井寅子先生のホメオパシー健康相談室第8回 

気の森 2002年秋号
  由井寅子先生のホメオパシー健康相談室
  あなたの悩みにお答えします!連載第8回

■アトピーのケース

7ヶ月 男の子
■主訴:顔と耳の湿疹(ミントを使用しているが、皮が剥けて黄色い汁が出ている)
、肘の硬化

■経過と現在の状態:生後3週間頃から顔に湿疹が出て、1ヶ月検診では乳児性湿疹と脂漏性湿疹が合わさり、アトピーになる可能性を指摘される。ステロイド剤を処方されたが使用せず。生後40日から70日にかけて湿疹はほとんどおさまっていた。
しかし2月8日頃から再び湿疹が出始め、自分で掻いて出血するためミントをつけるが、だんだん酷くなり、皮が剥け汁が出るほどになる。頬から耳にかけてが一番ひどい。入浴時に体幹部に直径7〜8ミリの紅はんが多数できる。 ・体重が増えない。首のすわりが遅く、ふにゃふにゃしている感じ。咳が出やすい。

■性格:多動。落ち着きがなく手足をパタパタ動かす。動きが早い。 ・両親によく噛みつく。 ・泣いたと思ったら笑い出す。気分がころころ変わる。 ・夕方から夜中にかけて起きていて、その間は抱っこしていないと泣く。放っておいても諦めずに長時間泣き、だんだん怒り出して激しく訴えるように泣く。涙を流す。 ・音に敏感で、少しの音にもビクつく。

■家族の歴史:母親・・・20歳のとき、月経不順でホルモン治療をする。 小さい頃からアトピーがあり、妊娠前3ヶ月までステロイド軟膏を使用していたが、使用を止めたため、その後2ヶ月間リバウンドで顔が真っ赤になる。妊娠5ヶ月までアトピーがひどかった。 ・臨月まで電車通勤しながら仕事をしており、かなりイライラしていた。出産で死ぬのではないかという恐怖心が強く、痛みに対しても耐性がないため、硬膜外麻酔をして無痛分娩となった。子宮収縮促進剤を点滴し、分娩室で1時間で出産(安産だった)。 母母・・・17歳で結核の疑い。 母父・・・結核。

■レイヤードメソッドの各層
抑圧と薬害層 … 分娩時の麻酔、促進剤、多動、不安症、噛みつく
(Opium、Stramonium、Morphine)
疾患層 … 汁が出る、アトピー、ヘルペス(Mezereum)
基本層 … 左側がひどい、紫色の発疹、黄色の膿、耳の問題とリンパ節の腫れ、薬による血の濁り (Lach ・Hep-s ・Baryt-m ・Bapti ・Merc)
根本層 … 出産が人工的に進められた、音に敏感、母親が妊娠中に胎児に注意を払わなかった(Borax)
マヤズム層 … 結核マヤズム、疥癬マヤズム (Tuberculinum  ・Psorinum)

■処方と解説
処方(1回目) 7月17日
朝 Mez 6C×1ビン
夜@ Stram 200C×3日間 (1週間あける)
夜A Op 200C×3日間 (1週間あける)
夜B Morph 200C×3日間(1週間あける)

夜は麻酔の害、朝は薬で抑圧されたアトピーに合うレメディーを選択。この場合、疾患の抑圧の影響が、感情や行動にも見られること、そしてバイタリティの強さを考え、高めのポーテンシーを選択する。レメディーを全て摂り終わった頃、「アトピーの上にカポジ水痘様発疹になってしまった。三日ほど様子をみていたが治っていく様子がみえないので…。」と母親が子どもを連れてホメオパシーセンターに駆け込んでくる。体中に赤い大きな発疹が出て、特に左の耳がすごく、耳の下のリンパ節が巨大に腫れ、ぐったりして熱もあり、症状のピークにあると思われる。これは、アトピーが根本的に治癒する過程でよく生じる症状で、ここを乗り切るには、ホメオパシーの助けを必要とする。今まで病気を押し出すことができなかった子どもが、レメディーによる排泄でバイタリティが高まると、このように自分で病気を押し出そうとし始める。もともと慢性病は、急性病を取り込む形で全体が不自然に安定したもので、病気を押し出す時には、逆にそれまでの不自然に安定していた形が崩れ、一時的に不安定状態(急性状態)になる。そうして、もとの自然体に戻っていくことができる。 この場合、慢性のアトピー症状が急性のカポジ水痘様発疹として表れている。症状の抑圧と薬害という蓋が取れたことで、本来の病気が出てきたものだが、この場合、本来の病気は、母親から引き継いだ、ステロイドの害と抑圧と考えられる。出てきた症状が、どれも血液の濁りを示唆しているからだ。この時、出てきた急性症状に合うレメディーで素早く対処しなければ、治癒へと向かっていかない。また急性症状の時は、表面的な心の葛藤の奥に隠れている本来のこだわり(病気)が出てくる時でもある。

処方(2回目) 1日目  9月2日 朝  昼   夕 夜
               Lach   1M 200C 30C 6C・・・左側がひどい、紫色の発疹
         2日目  9月3日 朝  昼   夕 夜
               Hep-s  1M 200C 30C 6C・・・膿を持っているヘルペス
         3日目  9月4日 朝  昼   夕 夜
               Bar-m  1M 200C 30C 6C・・・耳下のリンパの大きい腫れ            4日目  9月5日 朝  昼   夕 夜
               Baptisia 1M 200C 30C 6C・・・血液浄化、薬による血の濁り
         5日目  9月6日 朝  昼  夕  夜
               Merc   1M 200C 30C 6C・・・耳の問題とリンパ節

■写真の説明 慢性病を押しだし自然体に戻ろうとして表れる急性症状にぴったりのレメディーを与えた場合は、こんなにも早く良くなっていく。母親が早くからホメオパシーと出会い、この子に予防接種を一切受けさせていなかったことで、病気を押し出すバイタリティが大きく損なわれていなかったことも大きい。 6日目からはカポジ水痘様発疹はすっかり良くなり、そして何より、それと共にアトピーも大変良くなり、体重が増えた。この子にアトピーを生じさせていた病気、それは母親の薬害と考えられるが、それは同時に母親の心身のこだわりでもある。現代における心身のこだわりが増大している大きな原因は、症状を抑圧することで、バイタルフォースの流れを滞らせることにある。流れを堰き止めようとする力がこだわり、すなわち病気を作る力となっていることが多いのである。予防接種もその一つ。マヤズムだけが病気を作り出す土壌ではない。この場合、症状からレメディーを選択しているが、この子に潜んでいたこだわりを暗示している。それは、同時に母親のステロイドの害とこだわりを暗示している。 次は根本体質のBoraxを与えることで、この子本来の性格が出てくるはず。Boraxは、母親が妊娠中に胎児にあまり注意を向けず、語りかけなかった子どもの根本レメディーである。このようにプラクティカルアプローチは、患者を異なるレベルの層からなる全体としてとらえ、タマネギの皮を表面から順番に剥がしていくやり方をする。そして、守らなければならないルールから自由であり、一人一人の患者に合わせ臨機応変にアプローチを変えるやり方である。ちなみに、1Mから6Cまでポーテンシーを下降させて処方する方法を下降メソッドといい悪化が出にくい処方である。通常は1日〜2日に1粒だが、急性となっているので、1日で終えるよう指示した。

(9月3日)

    (9月4日)            (9月5日)        (9月6日)
(9月7日)