大江戸サンバ通信 〔2002・12〕 VOL17 ホメオパシーと私! ] 

■大江戸サンバ通信 VOL.17 大江戸サンバ通信 Vol.17(2002年12月20日)
ホメオパシーと私 by 鴫原操 (みづき助産院助産師、HMA公認ホメオパス)

5年前のちょうど今頃の季節、以前勤めていた助産院に一人の妊婦さんがやってきて、言いました。
「ホメオパシーを使って出産したいと思っているので手伝って欲しいのですが。」
「ホメオパシーって何ですか?」 「私にもうまく説明できないので、これを読んでください。」 と、本やらパンフレットやらをたくさん差し出されました。 こんなにたくさん読んでいる暇はないよーと思っていると、由井先生※1)が直接説明して下さる機会がある、とのこと。早速話を聞きに行きましたが、あまり良く理解できないまま、出産用キットと一般キットを買いもとめ、どう使っていいかわからず、しまい込んでいる間に、例の妊婦さんが出産になったのでした。 痛みをやわらげようとして風呂場に行く途中の、洗面所の木の香りのする板の間に、くずれるようになった彼女が「赤ちゃん、出ておいで」と静かにつぶやいて、会陰に手をやると生まれていたのです(私は手を出す余裕がなかった)。彼女は初産で、しかも若い頃自殺未遂をしたことがあったらしく、手首にも傷をもつ人でした。そのトラウマを由井先生の出して下さるレメディーで乗り越え、自分にふさわしい男性とめぐりあい、あちこちの不調をなだめ(あまり丈夫な人ではありませんでした)、本当の意味での自然のお産をしたのでした。今は三人のお子さんの母です。

私はこの出来事の後、4月になるのを待って「ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー」に入学し、由井先生のもとで三年間学ぶことになりました。
学校に入って間もない頃、友人が妊娠しました。第1子は経膣だったのに(病院出産)、第2子は骨盤位で帝王切開していたため、三人目の今回も最初から病院で、ということで相談に乗っていました。妊娠中期くらいから医師は首をかしげ、もしかしたら普通の子ではないかもしれない、あまり期待しないように、と言いました。母親はそれでも産声をあげるようならば全力で育てる、と思っていたのですが、結局9ヶ月で18トリソミーのために死産でした。
「破水したから入院した」との知らせで、その病院に向かう途中、電車の中で必死に手引きを操ると、「死産。母親に。シミシフーガ※2」とだけ書いてある箇所が眼にとまりました。部屋に入るなり、泣き崩れてベッドから落ちんばかりになっている母親の口の中に、シミシフーガを一粒投げ込んでしばらくは私も一緒にもらい泣きしていました。
8分後に、さめざめと泣いていた彼女はいきなり泣き止んで、伸びをし、言ったのです。「しぎちゃん、ごめん。私なんだかものすごく眠くなっちゃった。ゆうべ一晩寝ていないんだもん。」と言うなり、コロッと眠ってしまったのです。仕方がないので外に出て、白いバラを10本買い、分娩室に置かれている赤ちゃんのそばに置いて手を合わせていると、まもなく母親が目覚めました。
「ところでしぎちゃん。さっきの砂糖玉は何?」 「あのね、私も勉強を始めたばかりだから、うまく説明できないんだけど。毒をもって毒を制す、と言ってね」「しぎちゃん、私に毒を盛ったってこと?」 「常識では考えられないくらいに薄めてあるので、もう毒性はないの。もし本当に毒だったとしたら具合悪くなっているはずじゃない。でもあなたは眠っちゃっただけじゃない。しかも、さっきとちがってすっきりした顔しているよ」 「そうなのよ。気持ちが楽になっちゃっているの。どうしたんだろう、私。」
2日で退院した彼女は、亡くなった児の位牌を作り、仏壇に向かって、朝・晩祈りを捧げる毎日になりました。そして、これが、私が自分で初めてレメディーを使った症例だったのです。

その次は子供でした。1歳6ヶ月のその男の子と2人目を妊娠中のその母親と3人でファミレスで食事をしている時でした。料理をつついているばかりで、食べない男の子をお母さんがたしなめましたが、それが気に入らなかったのか、いよいよそっくり返って子供用椅子から落ちそうになりました。床の下ろしてやるといきなりテーブルの角にガンガンと自分の頭を打ちつけたのです。「やめさせてよ、早く。頭割れちゃう!」と私は叫んだのですが、母親は結構落ち着いたものでした。「頭、痛い痛いだからね、やめようね。」と言ってひざの上に抱き上げました。 その後ポツポツと話し始めたところによれば−その子が生まれる前から夫から暴力を受けていた。お腹をぶたれたりけられたり、はなかったが、顔に青アザができ、腰や足が痛くて立てないほどにやられることが、何回もあった。その子は父が母を殴るのを、胎児の時からずっと見て(?)きたのだ。1歳6ヶ月なのにほとんど言葉らしいものは出ず、床や壁に自分の頭をうちつけて、眉間に縦じわを寄せ、時には父親の前に立ちはだかって、母をかばうような素振りを見せることもあったという。由井先生の説明では恐怖から自虐に走ることは当然ある、とか。 せめてこの男の子だけでも何とかしてやりたいと思って、ストロモニューム※3)、ポースティーラ※4)、スタッフィサグリア※5)を与えました。その間は数日夜中に叫んだり、泣いたり、大変だったそうですが、その後に生まれた弟のほっぺにすりすりして、ニコッと笑うようになりました。眉間のしわは消えて、言葉が少しずつ出るようになりました。母親がレメディーのしまってある引き出しに手をかけると、"ちょうだい"という仕草をして踊るのです。そして弟が母に抱かれている時は、父親のひざに座るようになりました。この子の変化にびっくりした父親は、自分もレメディーをとる、と言い出し、結局母と3人でホメオパシー相談を受けることになりました。

それやこれやで、この4年間の間にどれだけの妊産婦さんや子供達が救われたことでしょうか。私は助産師なので、母子にかかわることが多くなりますが、心身症、拒食、依存症などの心の病気、無月経、更年期などのホルモンバランス異常、外科的、内科的、歯科、皮膚科など幅広い心と身体の不調に有効です。もちろん動物、植物にも有効です。イギリスでは30C※6)のポーテンシーのものはドラッグストアで自由に買うことができ、日常の不調は薬ではなくレメディーで整え、自分の健康は自分で守る(自然治癒力で治す)という精神が行き渡っています。英国王室にはホメオパスが複数おり、王立のホメオパシー専門病院があって保険がききます。 命の誕生の原点に必ず立ち会う私達助産師が正しくホメオパシーを理解し、正しくホメオパシーを用いることによって、出産をより自然にし、父と母と子が健やかに育まれるように、サポートすることは可能であると私は考えております。
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※1・・・由井寅子先生、HMA(英国ホメオパシー医学協会)名誉会員、HMA認定ホメオパス、ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー学長、日本ホメオパシー医学協会会長。
※2〜5・・・レメディーの種類
※6・・・レメディーの希釈しんとうの単位。エネルギーレベルをあらわす。
※「同種の法則」「超微量の法則」「治癒の法則」などホメオパシーの基礎について知りたい方、書籍があります。また講演会、講習会、相談会の問い合わせのいずれも、ホメオパシージャパン(TEL:03-5352-7730)の小島さんまでどうぞ。