ホメオパシーの手引き⑬放射能より低線量放射線によるダメージ

2.10 放射線が胎芽に与えるダメージ

急速な細胞分裂をせねばならない細胞は最も放射線の影響を受け易いものの一つである。
したがってことに胎芽は放射線の影響に対して脆弱である。卵子の受精から着床までの期間中は殆どの胎芽は非常に少ない線量によって死ぬ。
妊娠第一期(初期の三カ月間)は、受けた放射線量が少なくても器官の奇形を誘発する―線量が多ければ流産を引き起こす。
妊娠15週くらいからの成長期には奇形は起こらないが、子供の後の人生になってからしか現れない遅発性のダメージ(悪性腫瘍のような)が起こる可能性が高くなる。
とりわけ生殖器官は妊娠第三期(最後の三カ月間)の間に危機に曝される。
胎児に対する安全なレベルの放射線など存在しないと考えるゆえに、いかなる形でも放射線を受けること(例:エックス線)はさけるべきである。

2.11 低い放射線量によるダメージ

チェルノブイリ事故の起こる少し前に出版された本(『なぜ低レベルの放射能でさえ生命を脅かすのか』Holger Strohm、フランクフルト)には原子力の専門家による、低レベルの放射線の人間に対する危険性の警告がなされた70年代からの寄稿文がある。下記は放射線学者 Ernst Sternglass 博士による論文の抜粋である。
「大気と水における低レベル放射能の有害な影響力の推定値全ては、100から1000もの要因において不適切である。なぜならばエックス線の研究結果をウランからの生成物である放射能を持つ放射線に置き換えているからである。このことは不正確な評価を生み重大な結末を招く。放射能の最も危険な影響力とは遺伝子のダメージであると我々は何年もの間確信してきた。卵子および精子細胞は事実上、胚芽や胎児の放射能耐性の百万倍も耐性があることがわかった。
さらに、卵子細胞は自分自身で修復する能力を持つことがわかった。このことはオークリッジ国立研究所でマウスを用いた広範囲の研究によって検証されている。低い放射線量では、自己修復を図った卵子細胞も酷くダメージを受けた卵子細胞も共に受精が不可能であった。子宮に照射を受けた子供では、人生最初の10年間における癌と白血病の発症数を2倍にするのに1.2ラド(編集部注:ガンマ線・ベータ線で12ミリシーベルト)で十分であった。妊娠初期の数週間の間に放射線に被曝した子供は同様の影響力を0.1 ラド(編集部注:ガンマ線・ベータ線で1ミリシーベルト)で示したが、この数字は我々が1年間を通して受ける自然の放射線量とまさに同じである。これらはStewart博士がイングランドとウェールズの1900万人の子供を体系的に観察して得た結果である。言い換えれば、我々は放射能の悪影響を大いに見くびっていたのである。」
「20年以上も秘密扱いにされてきた1000以上もの論文によれば、国連科学評議会は、癌に罹る危険の増大ではなく、放射能の最も脅威的な影響としての病気による非常に理解しにくい免疫の低下を1972年に指摘した。サルに低線量を照射する実験では、80%以上が特定の細菌あるいはウィルスの罹患を示した一方、放射線に当たっていない動物のうち病気になったのはほんの5〜10%であった。」
「ウラン採掘作業員の研究では驚きの事実が掘り出された。強い放射能に被ばくした作業者よりも少ない線量を浴びた作業者の方がより肺がんで死ぬことが多いという事実である。」
「新たな計算によれば(以前は無害だと考えられてきた)低レベルの放射線に曝された人の方が、より高い放射線量を受けた人に予想されたよりも癌になるケースが多い。」
「広島原爆からたった25年後に、原発からの真の放射能漏れが公になった。米国と英国が実験中の真っただ中に日本に落とされた原爆と同程度の放射能が各原子炉から放出されていた。」
「1940年前後は、世界のラジウム総量は数グラムか、ほんの数十キュリーだった。しかしたった一つの原発(イリノイ州ドレスデンにある)だけで年間736,000キュリーが排出されたのである。さらにアメリカはかつて原発からの放出量を二千万キュリーも許したのである!」
「国民に対して各州とも放射能の影響については無数の真実が秘密に伏された。世界中の人々が知識の闇に置き去りにされ科学者はその調査結果を公表することを禁じられた。」
「特定の器官は放射性物質を貯蔵する。日本では、膵臓癌の死亡率が広島原爆後1,200%増加した。一方その他の全ての癌による死亡率は 60%増。1950年から1965年の間に肺がんが750%増加した。」
「喫煙と放射性塵の組み合わせは確実に死に至ると考えられている。タバコの葉は放射性粒子、特にプルトニウムとポロニウムによってたやすく汚染される。喫煙は肺の内部の微細毛の活動を鈍らせるので、肺に侵入するいかなる粒子をもより長期間留めることになる。」
「通常の大気汚染物質と放射能との組み合わせはそれぞれが別個の時よりもはるかに危険である。人類最大の惨劇は、普通の塵と、普通の安全性に問題のない大気汚染物質と莫大な量の放射性ガスとの織りなす相乗効果である。それは中国の核実験で引き起こされ、フランスやロシアが継続中の核実験や原発による日々の排出によって引き起こされている。」
「1989年7月、米教育省は一部の下院議員に押された形で、以前は極秘扱いだった、1940年代に国有原発で働いていた60万人の従業員の健康記録を、独立した医療や研究の専門家に向けて情報公開した。」

編集部注:強い放射能に被曝するよりも少ない線量を浴びた場合の方が危険であるというのはにわかには信じがたいが(ここで強い弱いや少ない多いが、単位時間当たりの放射線量を言っているのか、累積被曝のことを言っているのか判然としないが)、強い刺激を受けると自己免疫が働きやすく、弱い刺激に対しては自己免疫が働きにくいということはあり得るので、同様のことはあり得るのかもしれない。つまり、放射線の害というのは結局のところDNAを傷つけることにあるが、それ以上に修復力(自己治癒力)が強ければとくに問題にはならないが、ある範囲の低放射線量の場合、すなわちDNAへのダメージが無視できない以上の線量でかつ自己治癒力が働かない程度の線量の場合、そのような問題が生じる可能性があるのかもしれないということである。
一方で低線量の放射線は、ホルンミスト効果(生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量であれば逆に良い作用を示す生理的刺激作用:ホメオパシーとの関連で説明されることも多い)として知られているように、微量な放射線は健康によいと主張する人も多い。微量の毒が自己治癒力を触発するのと同じと言えるかもしれないが、微量の毒が免疫が著しく低い人に対してマイナスに働くことがあるように、免疫が低い人に対しては低い線量の放射線が有害に作用する危険性があることを考慮する必要があるのかもしれない。また、外から放射線を浴びるのと放射性物質の内部被曝を一緒に議論することはできないと考える。
現在、放射線の被曝量の安全基準は癌の発症率を参考に決められているようだが、免疫低下こそが放射線の最も脅威的な影響であるというのは確かにその通りであろう。


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