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食と健康
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◇睡眠不足と免疫力低下

今回は、私たちの日常生活にとても大きな意味をもつ「睡眠」について取り上げます
実は睡眠の質の善し悪しは、生活環境、食の環境(食生活)、フトンやベッド、さらに枕などの睡眠関連グッズ、こういうさまざまな条件にかなり左右されます。
同時にまた、私たちのこころとからだの状態に大きな影響を及ぼします。大げさに言うと、良い眠りを手に入れられるか否かは、人生そのものを左右するということです。

●睡眠時間は「何時間」が適切か?


昔から一般に「8時間は眠らなければ」と言われます。1日24時間のうち、8時間は働き、8時間は眠る。それ以外のことに8時間を充てる…。
しかし今、日本国民のなかに、「私は毎日8時間寝ているよ!」と、明るく宣言できる方が何人おられるでしょうか? たとえば首都圏のサラリーマン。まず通勤にかかる時間は、家から会社まで「往復3時間」とします。そして会社や工場、事業所や研究所で、いったい何時間働くでしょうか? なかなか「8時間勤務」という方はいないでしょう。リストラや新規採用の手控えで、どこの会社も相当な労働力不足です。 また、民間会社ばかりではなく、警察なども大変だそうです。部署にもよるのでしょうが、大都市部の警察署の「交通課」あたりでは、職員の突然死(くも膜下出血など)や長期病欠で、人手はまったく足りないと聞いています。
さて、一般的に考えて、働き盛りのサラリーマンの労働時間は「1日10時間」というところ。すると、通勤時間と合わせて「13時間」ですから、残るのは「11時間」です。この「なけなしの11時間」をどう使うかで、人生は大きく異なってきます。
なにしろ朝・晩の食事もあれば、風呂にもゆっくり入りたい。テレビも少しは見たい、子どもに勉強を教えてやりたい。この際、上司にすごい企画書を見せたいから、難しいマーケティングの原書も読みたい。英会話や中国語会話も勉強したい…。
まったく11時間をフルに使っても足りないというのに、さらに「眠らなければならない」のです! そこで、やっと確保する(いやいや確保する?)睡眠時間が、せいぜい「5時間〜6時間」というところ。
民間のサラリーマンだけではありません。大学教授や小・中学校、高校の教職員とか、医師、看護師、ヘルパー、自営業の方でも、睡眠時間の確保に苦労している方が多いようです。
でも、みんなが考えるのは、本当は「何時間」眠ればいいのか? 


最適睡眠時間には相当な個人差がある −アインシュタインは10時間!?

翌日の仕事や勉強に差し障りがないためには、いったい何時間の睡眠が必要なのか? 実際にわれわれが知りたいのは、そういう具体的なことです。しかし残念なことに、結論としては『適正睡眠時間は人によって大きく異なる』ということのようです。 有名な物理学者、かのアインシュタインは、最低10時間眠る人・・・だったと言われます。かなり頭を使ったからでしょうか? 反対に、1日1時間の睡眠でも健康に支障がない人もいるということです。羨ましい限りです。 しかしそうなると、自分にとっての最適睡眠時間を知りたい。どうすればわかるのでしょう?
ここは、自分でいちばん良い状態を維持できる睡眠時間を、経験則から割り出すしかありません。


いったい睡眠の目的はなにか?
私たちは疲労した時、本能的にゴローンと横になります。いったいなぜでしょうか? 一説によると、肝臓に向かって流れて行く血液量が、立っている姿勢でいる場合に比べて、おおよそ2倍になるそうです。言い換えると、体内の循環系のスピードがアップして、新しい酸素や栄養分を含む新鮮な血液が素早く送れるのです。これなら疲労感も薄らぎます。 だとすると、われわれの睡眠もそれが目的なのでしょうか? たしかに、眠らないでも横になっているだけで、肉体疲労は相当に解消する(5〜6割程度という説も?)という見解があります。しかし逆に言うと、それでも眠らなければならない理由が、やはり別にあるのです。

<大脳皮質を休ませる!>
睡眠の大きな目的の1つは、脳を休ませること。すなわち、大脳皮質を休ませて、次の活動に備えるのです。
たとえば、あなたが10時間以上もがんばって働いたとすると、何となく「ボーっとする」感じを味わうのではないでしょうか?
これはもう、脳が「お奉行様、これ以上はどうかご勘弁ください」と言っているようなものなのです。
もともと、脳のなかの神経細胞ではものすごく大量の情報を処理します。そこでは当然ですが、大量の酸素を消費し続けます。さらに栄養素として、糖分をどんどん消費しています。
疲れた時に新鮮な空気をいっぱい吸い込んだり、甘いものを食べたりしてリフレッシュするのは、こういう理由があるのです。そして脳は、疲労が蓄積されやすい場所。すぐに限界点に達するので、その時には必ず休まなければもう働かないのです。

<眠っている間にメンテ班が出動!>
また別の理由として、からだ全体のメンテナンスが挙げられます。すなわち、眠っている時には、成長ホルモンが活発に分泌され細胞分裂を促進します。それで、物質代謝が活発になります。 すなわち、われわれが眠りについている間、からだのなかでは「メンテナンス班」が盛んに動いているのです。鉄道にたとえると、ちょうど終電車のあとに、保線部の作業班が登場するようなものです。 こうして、体内のあちこちで傷ついた細胞を修復したり新しい細胞を作ったりして、元気で長生きできるようにしてくれるのです。このように、私たちのからだの免疫機能を維持し、さらに強化する面でも、睡眠の時間は大切です。

○細菌やウイルスなどが私たちの体内に侵入すると、血液中の免疫細胞(リンパ球、マクロファージ、単球)から「サイトカイン」という物質が分泌されることはよく知られています。この物質は、細胞同士が会話をするためのメッセンジャーのようなものです。そして、その情報伝達能力のおかげで私たちの免疫システムも正常に維持されるのです。

○シカゴ大学(レヒトシャッフェン氏)によるラットの実験でも、ラットを眠らせない状態にしてストレスを与えると、最初に「皮膚の変化」が現れたということです。人間でも、女性はとくに睡眠不足で肌が荒れるわけですから、同じことです。また不眠による免疫力低下で、ラットの腸内細菌が敗血症を引き起し、4週間前後で死んでしまったそうです。

注:サイトカインとホルモン
@もともと、細胞の増殖とか死、細胞機能の発現・停止などは、その周りの細胞によってうまく制御されて、からだの恒常性(ホメオスタシス)が維持されていますが、このときに細胞間の情報伝達物質として頑張るのが「サイトカイン」です。
A情報伝達に関わる「タンパク質」で、抗体のような特異性はもっていません。また「サイトカイン」は、種々の細胞から分泌されるものです。
B内分泌系で分泌されるホルモンも、細胞間の情報伝達物質ですが、ホルモンは一般的に特定の産生臓器があります。またホルモンは、血管を通って標的の臓器に働き、細胞機能の調節などを行います。 睡眠時間が短い生活を長く続けていると、免疫力も完全に弱ってしまいます。ちなみに、新聞記者とか商社マンとかという激務に就いている方は、普通の方より短命という話をよく聞きます。気をつけたいものです。 さらに、体内における情報ネットワークである神経細胞(ニューロン)が整備されるのも、睡眠時です。


睡眠不足から「抑うつ状態」になることも!
睡眠不足は生体のリズムを乱します。交感神経が「過剰に興奮する」などという反応を引き起すこともあります。たとえば高血圧の場合、睡眠不足から血圧の上昇を招いてしまうことが多いですが、これは交感神経の過剰な活性化の結果と考えられます。
本来は休むべき脳が、クタクタになっても働き続けるなら、まさにこころとからだ全体に影響が現れてきます。さらに不眠は心理的・肉体的にもストレスとなり、またストレスが不眠を生むという悪循環も考えられます。
こうして、こころ(すなわち「脳」です)とからだの両面でガタガタとなると、単なる疲労ではなく、本格的な病気に進んでしまう可能性が出てきます。


●眠るための工夫
良い眠りを得るためによく言われるのは、次のようなことです。
@就寝前に暖かい牛乳を飲むこと
Aウォーキングやジョギングなど軽い運動をする。ただし、就寝直前に運動するとからだが目覚めてしまいます。できれば3時間以上前に行うこと
B就寝直前の入浴はよくない。遅い時間に入浴する時には、ぬるい湯にすること
C頭を働かせる作業は避けること。推理小説を読んだり、メールを打ったり、ネットの過激な掲示板に書き込んだりしないこと

★睡眠不足は心身にダメージを与えます。また、ダラダラと長時間横になっているのも、精神的にマイナスです。とにかく午後11時前後には寝て、朝は早く起きるようにすると、だんだんと熟睡のコツが身につくという意見もあります。

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