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食と環境
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◇夏バテ対策には智恵が大切

今回は、夏バテを克服し予防するための、そして秋以降に「夏の疲れ」を引きずらないための智恵と工夫を考えます。


●そもそも『夏バテ』とは何だろうか?

まず、基本のところから考えてみましょう。私達は夏になると「暑くてバテるよ」とよく言います。これは特に日本人に限らないことですが、それでも、日本の夏はやはり厳しいものがあります。
何しろ、厳しいのは日本の夏の「自然条件」だけではありません。どんなに暑くても、働かなければならないという日本のシステムがあります。もちろん、世界には(特にヨーロッパには)、国全体が長期のサマーバケーションをとって、みんな働かなくてもいいよと言ってくれる、そういう国もあります。
実は、本当か嘘か、江戸時代の日本でも、町人達はそんな感じだったようです(3か月休暇!)。
でもとにかく、今の日本には「お盆休み」程度しかありません。それも、せいぜい数日間の休みです。しかも、みんなが休めるわけではない(お金のない人、お金はあるけど忙しくて休んでいられない人・・・共にかなり多い)ので、夏でもほとんど働き続ける人が少なくないわけです。
ですから日本では、夏バテ対策とはすなわち、暑いなかでも働き続けるために「バテないための」対策なのです。

さて、いわゆる『夏バテ』とは、具体的に何でしょうか?
食欲がない、体がだるいし仕事も何もやる気がしない、熟睡できない、とにかく何もしたくない・・・。全体症状として、精神的に「やる気が出ない」うえ、肉体的にも「だるい」というのが一般的でしょう。
しかし考えてみると、食が進まないから体力が落ちてくるのか? ・・・体力的にバテがきているから、食欲も含めて前向きな意欲が湧かないのか? ・・・その両方なのか? ・・・そこがよくわかりません。
当たり前ですが、肉体と精神(気持ちのもちよう→意欲)は密接不可分です。そうすると、夏バテとはまず、肉体的機能の低下と考えて良いのではないでしょうか。

では、夏になるとどうして肉体的な機能低下が起こるのでしょうか?
ここでは『食欲』の話はいちおう退けておきます。暑いから食欲がなくなって、生体機能が低下するということになると、すべてが食事の内容(栄養摂取)だけで結論づけられてしまいます。
これでは話が単純すぎて、面白味がありません。それにまた、食欲はなくても栄養分をどうにか無理矢理に体内に注入(リンゲル注射や点滴のように)すれば、それで問題は解決となります。それは、なんだか少し変です。
やはり、夏バテにはもっといくつもの原因があるのではないか? もっと複雑なものではないか? ・・・そういう方向で考えるべきでしょう。


●夏バテの原因を探る

@高い湿度の影響

日本の夏の特徴は、何と言っても「湿度が高い」ことにあります。湿度がもっと低ければ、もっとカラッとした暑さなら、こんなに夏がしんどいこともないのでは?
多くの人が何となくそう感じています。それは直感的なものかもしれませんが、どこかの外国でカラッとした湿度の低い夏などを経験すると、その直感が正しいと感じてしまいます。
何より、湿度が高いとうまく汗をかくことができません。すなわち、大気が水分を多く含んでいれば、体表面からの水分(汗)の蒸発が妨げられ、熱が体内にこもってしまいます。すると、体温調節のために体は大きなエネルギーを使い、どうしても疲れやすくなってしまうのです。

A発汗による影響(水分・塩分の不足)

気温が高くなると、私達の体は発汗によって体温を下げようとします。汗が気化(蒸発)するときに熱が奪われ、それで体温を下げるのですが、いいことばかりではありません。
汗が出るということは、水分や塩分、ミネラル分が排出されることですから、体内ではこれらが不足する状態になります。

(1) 体内の水分不足

発汗で体から大量の水分が失われると、血液中の水分も減少します。それは血液濃度を高めて(サラサラ血液ではなくなって)血流を滞らせます。血液の流れがスムーズにいかなくなれば、当然、体の調整機能に支障が出る可能性があります(たとえば、新鮮な酸素や各種ホルモンなどは、血管を通って運ばれます)。

(2) 体内の塩分不足

塩分が不足するとどうでしょうか? もともと、塩分は人間にとって欠くことのできないもの。かつて上杉謙信は、武田氏との対決関係のなかでも、海をもたない甲斐の国に塩を届けさせ、今日に至るまで「敵に塩を送る」というフレーズを残しました。
これが「鯖を送る」とか「酒を送る」でないのは、やはり塩分が生命活動維持のために最低限必要な物質であることによるのでしょう。
それほど重要な塩分とは、いったいどのような役割を果たしているのか、整理してみましょう。

《塩分の働き》大きく分類すると、調節機能と情報伝達機能が挙げられます。

○調節機能(水分や体温の調節)

人間の体は、実は70パーセント近くが水分です。そして水分は、それが存在する場所によって、次の2つに分けられます。

・細胞内にある水分
・細胞の外:血液などにある水分

塩分は、細胞の内と外の水分バランスを調整(浸透圧による調整)する働きがあり、人体内にある水分のバランスを維持するのに役立っています。また体温を下げるためには、毛細血管を広げて血流量を増やしますが、そのために血管内に水分を取り込みます(そのとき、血液濃度は低くなります)。このように、水分調整は体温調整にもつながっています。

【浸透圧とは?】
濃度の異なった2種類の液体が半透膜で接していると、お互いに同じ濃度になろうとする力が生じますが、この力が浸透圧。

○情報伝達機能

塩分は体内で「ナトリウムイオン」となって活躍・・・実はナトリウムイオンは、いわゆる情報伝達物質として働きます。たとえば、脳から筋肉へ「活動開始!」と指令が出され、筋肉組織にそれが伝わるのは、ナトリウムイオンが指令を伝達するからなのです。
ですから体内の塩分が不足すると当然に、ナトリウムイオンの量も減ってしまいます。その結果、あらゆる情報伝達がスムーズにいかなくなる→各器官に対する指令がうまく伝わらない・・・体がコントロールできなくなるわけです。

B食生活における悪循環

夏の暑さは食生活にも影響を与えますが、具体的にどんな影響が考えられるでしょうか?
たとえば、次のような悪いサイクルに入り込むことは充分に考えられます。

「暑い」→「食欲がない」→「冷たいもの、ビール、清涼飲料水を摂る」→「消化器が冷える」→「消化器を正常な温度に戻すために余分なエネルギーが消費される」→「バテる」→「食欲がない」

※それでも、真夏に温かいものばかり飲み食いもできません。ときどきは、冷たい食べ物や飲み物の間に、温かいものを混ぜましょう。また、冷たいスープ、豆腐料理など、冷たくても栄養価のあるものも利用しましょう。

C睡眠不足のダメージ

これは、一般に考えられているより大きな影響を与えている可能性があります。寝苦しくて睡眠不足になると、体調は悪くなるのが当然です。そして、人間の体のなかでは眠っている間にさまざまな組織の修復が行われるのです。
いかに夏に「良質な睡眠」を確保するか、これはバテることが許されない立場の人にとって死活的なテーマです。

【ぬるいお風呂がいい!】
熱めの風呂は、大量に汗を出すことになり、お勧めできません。やはりぬるい湯に浸かって、リラックスすることが大切。また、お酒をグビグビ飲むと、アルコールの利尿作用のために夜中に何度も目が覚めて、結局は睡眠不足になります。
入浴後はスポーツドリンクを飲んで水分補給をし、エアコンで寝室の温度を下げ、冷たい風が直接体にあたらないようにして休みましょう。

D冷房によるダメージ

これは非常によく知られていますが、人間の体が急激な温度変化に対応できるのは、せいぜい5度までです。たとえば、外気温が32度であれば、室内温度は27度以上が無理のない温度です。
5度以上の急激な(大幅な)温度変化が連続するなら、人体の体温調節機能が変調をきたしてきて、ついには気温変化に対応できない状態に至ります。さらには、自律神経の失調にもつながります。


●『食』で工夫できることは?

日本では「土用のウナギ」という言葉もあるくらい、食の面からの「夏バテ対策」に気を配る習慣があります。
もっとも江戸時代には、ウナギを食べることができたのは金持ちだけで、庶民は「甘酒」を飲んでいたようです・・・実は「甘酒」は、夏バテに効く素晴らしい飲み物です。

《甘酒が夏バテに効く》
甘酒には2種類あります。麹(こうじ)から作るタイプと、酒粕を溶かして作るタイプです。この麹(こうじ)から作るタイプの甘酒が、夏にはとても良いようです。
なぜなら、ブドウ糖が20パーセント以上含まれており、この糖分が疲れに効きます。さらに、ビタミン類も豊富に含まれていて、天然の必須アミノ酸も多く含まれています。まさに『夏バテ防止ドリンク』なのです。

☆甘酒の作り方は、インターネットで検索すればすぐに見つかります。

《夏バテ防止にナイアシンとビタミンB1が大切》
ナイアシンは、水溶性ビタミン(ビタミンB3)で、ニコチン酸やニコチン酸アミドなどの総称です。このビタミンが不足すると「エネルギー不足」になってしまいます(バテる状態になる)・・・ここでエネルギーというのは、生命活動を維持・遂行するための活動エネルギーのことです。
私達の体内では、一つひとつの細胞内でブドウ糖を燃やして、この活動エネルギーを生み出すわけですが(あの「TCAサイクル」です)、細胞内のミトコンドリアでエネルギーが作られます。ところが、ブドウ糖はそのままではミトコンドリアに入れないのです。かたちを変えて入る必要があるのです。
ここでブドウ糖は、変身するためにナイアシンとビタミンB1を必要とします。ですから、両者が不足すると、ミトコンドリアではエネルギーを作れないことになります。
なお、ナイアシンは神経組織の働きにも関係があり、血行促進や悪玉コレステロール退治にも関係すると言われます→アルコール・コーヒー・抗生物質などは、ナイアシンの吸収を妨げると考えられています。

☆夏は各種ビタミンやミネラルの消耗が激しいので、新鮮な野菜や果物、乳製品などをしっかり摂りましょう。

【ビタミンとは何か?】
ビタミンとは、体に必要な五大栄養素の一つで、水に溶ける「水溶性ビタミン」と、油に溶ける「脂溶性ビタミン」があります。また現在のところ、13種類のビタミンが認められています。ビタミンは、体内で潤滑油のような役割を果たし、互いに影響し合って働きます。私達の体内では作られないものが多いので、食事によって摂取する必要があります。

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