環境・自然治癒力・ホメオパシー ニュートピックス;
食と環境病気と自然治癒力
トラコ先生inロンドン面白本と美術館・博物館
食と環境 病気と自然治癒力 BOOKS リンク


食と環境
5


◇改正食品衛生法の施行

農薬撒布などは、その土地で作られる作物を汚染したり(残留農薬の問題)、土壌汚染、さらに水質汚染の大きな原因といわれています。
古くは米国の女性学者レイチェル・カーソンが、DDTなどの農薬による環境破壊を、その著書『沈黙の春』で鋭く警告しました。
しかしまた農薬は、害虫防除や除草の効果によって農作物の成長を助けるものとして、現在も世界中で広く使われています。そして、ガーデニングブームの昨今では、出荷用の農作物を育てる田畑・農場だけではなく、個人の自宅でも多く使われているのです。
さて、農薬等による土壌や水資源、大気や農産物への汚染は、大きくは環境問題です。しかし、消費者にとっては食品汚染の問題でもあり、場合によっては化学物質過敏症等にも結びつく医療問題でもあります。そこでわが国では、農林水産省、厚生労働省、環境省が法規制を含め対策を打ち出しています。

最近の動きとしては、去る2003年5月に行われた「食品衛生法」の改正で、2006年5月末までに「ポジティブリスト制」を導入することが決められていました。そして、平成18年5月29日より食品衛生法の「改正法」が施行され、この「ポジティブリスト制」に移行することになったのです。
それではいったい、この「ポジティブリスト制」とは何なのでしょうか? それをまず知る必要があります。


◇「ポジティブリスト制」を知る◇

食品の残留農薬等の規制については、前記のとおり「食品衛生法」で残留基準が設定されています。この法律は、いわゆる「食品」の安全性を確保するために制定されたわけですが、その場合の「食品」とは、次のように定義されています。

(食品衛生法 第1章「総則」から)

<第1条> 
この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。

<第4条の1>
この法律で食品とは、すべての飲食物をいう。ただし、薬事法(昭和35年法律145号)に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない。

このように、食品衛生法は「薬事法」で規定される「医薬品」と「医薬部外品」を除くすべての飲食物をその適用範囲に含めているわけで、非常に広範囲に適用される法律であることが特徴なのです。
さて、今回の「ポジティブリスト制」というのは、残留基準が設定されていない、農薬が残留する食品の流通を禁止する方式のことです。残留農薬や食品添加物の規制方法には、基本的に「ポジティブリスト制」と「ネガティブリスト制」の2つがありますが、ポジティブリスト制とは、残留農薬等を原則としてすべて禁止して、その例外となる「残留を認めるもの」のみを一覧表(リスト)にして示すものです。
それに対してネガティブリスト制とは、反対のアプローチをします。すなわち原則的に自由にして、例外として「残留してはならないもの」を一覧表(リスト)にして示すのです。


◇改正の背景は?◇

散布された農薬は本来の役割を果たした後、日光や土壌微生物によって分解され、消失していきます。しかし、きわめて微量ですが、農作物に残留する可能性があります。

そこで、農作物に残留した残留農薬が人の体に害を及ぼすことがないように、上限値を定めたものが「残留農薬基準」です。残留基準を超えて農薬が残留している農産物は、国産品、輸入品を問わず、流通、販売などが禁止されます。


これまでは、一部の農薬と作物の組み合わせにだけ残留農薬の基準が設定されていました。ですから、この「組み合わせ」のなかに含まれないものは規制外として、流通を規制しないことになっていたのです。いわば、例外だけを規制したのです。
今後は、すべての組み合わせに残留農薬の基準が設定されることになります。特に「農薬取締法」という法律で使用が認められていない組み合わせの多くは、厳しい基準の下に置かれます[0.01ppm(mg/kg)]。
さて、それではなぜ、このような法改正が行なわれたのでしょうか?

もともと農薬は、多くの法律によって使用が規制されています。

1.「食品衛生法」
   目的:残留農薬からの食品の安全性確保

2.「毒物及び劇物取締法」
   目的:農薬散布等に伴う人体への有害な作用を回避する

3.「環境基本法」「水質汚濁防止法」
   目的:環境の安全性確保

4.また他にも「農薬取締法」や「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」などで規制されます。

大きく「化学物質」による環境汚染という問題を考えた場合に、農薬による汚染というのは、非常に身近な問題です。田畑で作られる農産物や、街中の樹木等に対して使用され、その結果として、食品中に残留したり、肉類や乳製品に濃縮されて残留することで、場合によっては健康に悪影響を与えます。
上記1.の「食品衛生法」では、食品中の農薬残留量等についての基準が定められ、この基準に合致しない食品の販売は禁じられています。また、ゴルフ場の芝の管理に使用される農薬については、国・自治体からその適正な使用につき細かい指導を行い、環境汚染の防止が図られています。
上記4.の「農薬取締法」では、農薬を製造・輸入する事業者に対し、国への販売の申請、販売農薬の登録、使用方法の表示などが義務づけられています。
このように、食べ物、飲み物、環境への農薬汚染を防ぐために、これまでも多くの法律によって規制がかけられて来ました。しかし、決して十分な基準ではなかったのは明らかで、さらに厳しい基準を設けなければ、消費者の信頼を得られない時代になって来たということでしょう。


◇さまざまな階層での汚染◇

土地への汚染は、表面(表層)の土壌には限りません。通常は、深部の自然地層や帯水層(水を含む層)にまで達しているケースがほとんどであると思われます。ですから、汚染の表面的な一部にだけ目を奪われて浄化事業等を行なっても意味がないのです。

《地質汚染》
これは、地下の複合汚染の全体を指します。個別には「地層汚染」・「地下水汚染」・「地下空気汚染」と呼ばれる3つの汚染の総称です。これらは、地下で相互に複雑にからみ合って、影響し合っています。

《地層汚染》
鉛やヒ素などの重金属類、トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物、農薬類、ダイオキシン類などによって、地層が汚染される現象です。重金属による汚染は、各種工場やメッキ工場の跡地、鉱山跡地の周辺等で比較的多くみられます。農薬による汚染は、農地周辺・ゴルフ場等でみられます。また、地下水の汚染が懸念されています。
ダイオキシン類の汚染は、廃棄物の焼却施設や処分場周辺で起きています。

《地下水汚染》
文字通り、地下水が汚染されることです。上記の地層汚染と同じように、重金属、有機化合物、農薬による汚染が多くみられます。また、肥料や生活排水などに起因する硝酸性窒素による汚染が増加する傾向がみられています。地下水は地中で移動するため、短期間で汚染が拡散すると考えられています。

《地下空気汚染》
汚染された地層や汚染された地下水から、揮発したり分配した有機化合物の蒸気が、地層や土壌の粒子間、あるいは地下空洞にある地下空気を汚染することです。これは、大気の汚染にもつながります。


<参考サイト>

厚生労働省/食品安全情報〔分野別施策〕(食品中の残留農薬・動物用医薬品・飼料添加物)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/index.html

電子政府(e‐Gov.)法令検索から「食品衛生法」等を調べられます
http://www.e-gov.go.jp/

薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性部会・残留農薬部会・乳肉水産食品部会合同部会(平成15年6月27日開催)配付資料一覧
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/06/s0627-22.html

[資料] 平成17年2月4日 農林水産省

『「無農薬」等農薬・化学肥料に係る農産物の表示特別調査』の実施結果について

 近年、消費者の食の安全・安心に対する関心が高まる中で、農産物の「農薬不使用」「化学肥料不使用」等の表示に対する信頼性の確保が求められているところです。このため、平成16年7月から平成17年1月にかけて農産物の表示に関する標記の特別調査を実施しました。本特別調査においては、小売店舗、流通業者及び生産者に対する表示根拠の確認並びに(独)農林水産消費技術センターによる農産物の残留農薬分析により、農産物の名称・原産地の表示や「農薬不使用」等の表示が適正なものであるかの確認を行ったところです。
 今般、標記の特別調査の結果及びその結果判明した不適正表示事案に対する措置等について、以下のとおり取りまとめを行いましたので、公表します。

〈ポイント〉

1. 全国各地の小売店2,998店舗で480,362点の農産物を対象に表示状況の調査を行い、21,806点の「農薬不使用」等の表示のある農産物を確認した。また、店舗において仕入伝票の点検等により表示根拠の確認調査を行うとともに、必要に応じ、流通業者807業者及び生産者921農家等に対する遡及調査を行った。さらに、農薬を使用せずに栽培した旨の表示のある農産物286点の残留農薬分析を行い、残留農薬が検出された場合はその原因を調査した。

2. 調査の結果、小売店のべ169店舗で、のべ1,573点の義務表示事項(名称、原産地)の欠落が認められた。

3. また、表示内容が事実と異なる不適正表示は、小売店114店舗、流通業者23業者及び生産者15農家等の計152業者等において、認められた。このうち、「農薬不使用」等の表示に係る不適正表示は、小売店9店舗、流通業者13業者及び生産者15農家等の計37業者等において、認められた。なお、「農薬不使用」等の表示に係る不適正表示のうち、残留農薬分析結果を踏まえた調査により判明したものは、小売店2店舗、流通業者3業者及び生産者7農家等の計12業者等であった。

 これらについては、その発生原因や背景等について事実確認を行い、その内容に応じてJAS法に基づく指示等の措置(指示・公表8件、文書指導101件など)を行っているところである。

(注)本調査においては、「農薬不使用」等の表示として、農薬や化学肥料を使用せず又は削減して栽培した旨を示すと認められる表示を対象とした。
 

[資料]  平成16年6月29日 農林水産省

「無農薬」等農薬・化学肥料に係る農産物の表示特別調査の実施について

 
1. 趣旨

 近年、消費者の食の安全・安心に対する関心が高まる中で、農産物に付された「無農薬」「無化学肥料」等の表示に対する信頼性の確保が求められているところです。農林水産省においては、農薬などを全く使わない、あるいは一定程度削減して栽培した農産物の表示の方法等を明確にすることとして、平成15年に「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を改正し、本年4月から生産された農産物に適用しているところです。
 この改正後のガイドラインでは、「無農薬」の用語は残留農薬がないとの誤認を与えかねないこと、「減農薬」の用語は削減の比較対象、割合が不明確なことから、表示禁止事項とされています。また、ガイドラインによらない「無農薬」「無化学肥料」表示についても、仮に、その農産物に農薬や化学肥料が使用されていれば、消費者に優良誤認を与えるものであり、JAS法に基づき定められた「生鮮食品品質表示基準」違反となります。これらを踏まえ、消費者の表示に対する信頼を確保する観点から、「無農薬」等の表示が付されている農産物を対象に、残留農薬分析を含む「無農薬」等表示の真正性を確認する特別調査を実施します。

2. 調査実施機関

(1)小売店舗、流通業者及び生産者の調査並びに残留農薬分析用農産物の買い上げ
   地方農政局、北海道農政事務所、沖縄総合事務局
(2)農産物の残留農薬分析
   独立行政法人農林水産消費技術センター(以下「センター」という。)

3. 調査店舗数

 全国で3,000店程度の小売店舗(百貨店、スーパー、青果物専門店、自然食品店)を対象に「無農薬」等と表示された農産物について調査を実施します。また、これら店舗に「無農薬」等と表示された農産物を納品している流通業者、生産者に対する調査を実施します。

 (注)「無農薬」等の表示とは、農薬や化学肥料を用いず又は削減して栽培した旨を示すと認められる表示をいう。

4. 調査内容

「無農薬」等の表示が付された農産物を対象に次の内容の調査を実施するとともに、調査対象店舗に陳列されている全ての農産物を対象に必要な名称、原産地の表示実施率及び表示根拠等の確認を行います。

(1)「無農薬」等の表示の真正性確認

 小売店舗、流通業者に対しては、伝票類の点検及び仕入れ・販売量の相互比較により農産物に付された「無農薬」等の表示の真正性を確認します。生産者に対しては、栽培管理記録、ほ場等の確認を行います。

(2)残留農薬分析による確認

 地方農政局等を通じて全国で300点程度の「無農薬」等のうち農薬を使用していない旨の表示が付された農産物を買い上げ、センターにおいて、残留農薬分析を実施します。なお、農産物の買い上げは、店舗に予告することなく行います。

5. 調査時期

7月5日(月)から開始し、疑義が生じた場合の追跡調査を除き、9月末日までを目途に実施する予定です。

6. 不適正表示への対応

 これらの調査の結果、ガイドラインによる表示とうたいながらガイドラインで定める手続・表示方法等に従わず表示を行っている、「無農薬」「無化学肥料」と表示しているにもかかわらず農薬や化学肥料が使用されている等の疑義が生じた場合は、関係都道府県とも連携してJAS法に基づく立入検査等を実施し、不適正表示を行った事実が確認されれば、同法に基づき指示及び業者名の公表を含めた厳正な措置を行います。

7. その他

センターによる残留農薬分析は、本特別調査終了後も必要に応じて行います。

<参 考>

1.改正後のガイドラインでは、「特別栽培農産物」と表示できる農産物は、化学合成農薬及び化学肥料を共に5割以上節減したものとしています。また、「無農薬」という用語は残留農薬がないとの消費者に誤認を与えかねないこと、「減農薬」の用語は削減の比較対象、割合が不明確なことから、それぞれ表示禁止事項としています。


2.ガイドラインによらないで「無農薬」「無化学肥料」と表示している場合に、仮に、その農産物に農薬や化学肥料が使用されていれば、消費者に優良誤認を与えるものであり、JAS法に基づき定められた「生鮮食品品質表示基準」違反となります。

 
農林水産省サイト http://www.maff.go.jp/

このページのTOPへ

Copyright©2004-2005 日本ホメオパシー医学研究会 All rights reserved.