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病気と自然治癒力
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◇ メタボリック・シンドローム ◇

近頃、医療関係者が頻繁に使う言葉に「メタボリック・シンドローム」があります。これは、一般向けの健康雑誌にも登場している言葉なので、ご存知の方も多いでしょう。
ところで、この言葉の意味するところは何でしょうか?
実は、生活習慣病が重なっている危険な状態を意味しています。肥満(特に内臓肥満)が中心となって、高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病が重なった複合病状態。動脈硬化を促進する危険な状態が『メタボリック・シンドローム』と呼ばれる状態です。
また、シンドロームというからには『症候群』ですから、さまざまな症候が見られることになります。


中年男性では4人に1人が…

この「メタボリック・シンドローム」を知らない人でも、おそらく「死の四重奏」という言葉は聞いたことがあるはずです。
「死の四重奏」とは、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病・・・という四つの生活習慣病が組み合わさったこと、四つの生活習慣病の合併症です。
これら四つの生活習慣病が重なるとき、虚血性疾患(心疾患、脳血管疾患)に陥る可能性が高まるのです。
具体的に心疾患の代表と言えば、心臓の冠状動脈で血流が滞ることで起こる冠状動脈疾患の『心筋梗塞』や『狭心症』で、それに対し脳血管疾患の代表は、脳の血管が詰まる『脳梗塞』です。この脳梗塞は、日本人に多い病気です。
(注)脳梗塞は、脳出血・クモ膜下出血・一過性脳虚血とともに「脳卒中」というカテゴリーに含まれます。
肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病の四つの因子が、どのようなメカニズムで相互作用を及ぼし合っているか、それはまだ明確にはされていないようです。
しかし、心疾患や脳血管疾患の患者を調査すると、これら四つの生活習慣病すべてを併発していたり、二つ以上を複合して併発しているケースが非常に多いということで、それが動脈硬化を促進して、からだのどこかで血管が詰まるという事態を招くと考えられます。
そして、40歳以上の日本人男性では、4人に1人がメタボリック・シンドローム(症候群)であると見られています。


冠状動脈疾患や脳卒中を避ける…日ごろの心がけが大切

以前から、高血圧症や高コレステロール血症(高脂血症のうち、コレステロール値が高い場合)を持つ人のケースでは、冠状動脈疾患に罹る頻度が高いことはよく知られていました。
しかしその後、以下のような因子が単独でも動脈硬化を促進するのではないか、そう考えられるようになってきたのです。これは、脳卒中よりも冠状動脈疾患が多い欧米人対象の研究によるものです。

<単独でも動脈硬化を促進すると考えられる因子>  
・高血圧  
・高トリグリセライド血症(高脂血症のうち、中性脂肪値が高い場合)  
・上半身の肥満  
・耐糖能異常(糖尿病、またはその前段階である「境界型」)

肥 満
肥満という概念は、かなり主観的なものです。人種によって体格も違いますし、本人の生まれついた体質・体型もあります。 そこで、日本人のための一つの基準として、次の数字を参考にしてください(特にウエスト:腹囲に注目してください)。
BMI25以上 かつ ウエストが<男性で85cm以上> <女性で90cm以上>
また、お腹周りの脂肪を気にされる方も多いと思いますが、自分でお腹の脂肪をしっかりつかめる場合は「皮下脂肪」が多いと考えられ、つかみにくい場合は「内臓脂肪」が多いと言われます。どちらかと言うと、内臓脂肪が多い場合の方が動脈硬化のリスクが高くなると考えられています。

高血圧の治療
日本では、お酒を飲む人は血圧が高くなると信じられていますが、それは飲む量によります。少なめのであればストレスの発散になるためか、かえって血流がよくなり、血圧には悪影響がないという研究者もいます。もちろん、お酒の種類にもよるでしょうが…。 まず、高血圧とはどの程度を指しているのか? 
それを確認しましょう(俗称=拡張期血圧は「下の血圧」:収縮期血圧は「上の血圧」)。

@至適血圧(最適) 収縮期血圧 <120    and  拡張期血圧<80
A正常血圧     収縮期血圧 120〜129 and 拡張期血圧 80〜84
B正常高値血圧   収縮期血圧 130〜139 or  拡張期血圧 85〜89
C軽症高血圧    収縮期血圧 140〜159 or 拡張期血圧 90〜99
D中等症高血圧   収縮期血圧 160〜179 or 拡張期血圧 100〜109
E重症高血圧    収縮期血圧 ≧180 or 拡張期血圧 ≧110
F収縮期高血圧   収縮期血圧 ≧140    and   拡張期血圧 <90
(日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2004」から)

血圧というのは、同一人物でも、1日のなかで時間帯によって変動します。また、測定する場所(医療機関か否か)やその場の雰囲気によっても変動します。ですから、年に一度や2度の検査で正常値であっても、それだけで安心はできません。

<仮面高血圧>
病院や診療所の外来で血圧を測定すると正常値なのに、自宅などで測定すると血圧の値が高いこと。

<白衣高血圧>
自宅などで血圧を測定すると正常値なのに、病院や診療所の外来で測定すると血圧の値が高いこと。
とにかく日本には、高血圧症の「患者」が3000万人もいると言われます。塩分を好む食生活や、ストレスの強い社会環境などが影響していると考えられていますが、放って置いていいわけがありません。
では、どうすればいいのでしょうか? 基本的には、高血圧も含めて生活習慣病の治療は、食生活の見直し(食事療法)と運動療法から始まります。言い換えると、薬物治療には決定的な効果が望めないのです。
したがって、息の長い治療が必要になりますので、急にどうにかしようと焦らないことが大切です。
食事に関しては、和食を基本とします。また塩分量に気を使いましょう(塩分自体は必要なものです)。また現代人は、みんなストレスの多い生活をしています。仕事でもプライベートでも、ストレスをなくすことはできません(適度のストレスは、人間にとって必要です)。
自分がどんなときにリラックスできるか、いろいろ思い出したり試したりするのも手です。また運動も、少しずつ工夫することが大切です。手っ取り早いのはウォーキングですが、ただがむしゃらに「やってやるゾ!」と意気込むのでは、かえって血圧が上がるもとです。
とりあえず「血圧測定器」を購入して、こまめに自分や家族の血圧をチェックすることから始めてはいかがでしょう?

参考サイト:札幌厚生病院循環器科(役に立つ情報があります)
http://www.gik.gr.jp/~skj/

高脂血症の治療
ご存じのように、高脂血症にはいくつかのタイプがあります。まず、それを整理してみましょう。  

@LDLコレステロール値が高い場合(いわゆる悪玉コレステロールが高い):高コレステロール血症
食生活の欧米化などによって、日本でも高コレステロール血症の人が増加中です(日本国民の20%前後とも見られる)。

A中性脂肪(トリグリセライド)値が高い場合:高トリグリセライド血症
これは、日本人男性の高脂血症で多いと言われるタイプです。肥満、アルコールの過剰摂取などの影響があると考えられます。

BLDLコレステロール値と中性脂肪値の両方が高い場合:複合型高脂血症
これは、どちらの値も高いケース。早発性の動脈硬化症につながる可能性があります。

CHDLコレステロール値が低い場合:低HDLコレステロール血症
これは、善玉と見られるHDLコレステロール値が低いケース。コレステロールや中性脂肪の値が高ければ、動脈硬化のリスクが高まります。

このように、高脂血症にもいろいろタイプがあります。中性脂肪値が高いタイプ、コレステロール値が高いタイプ、両方が高いタイプなど、それぞれに治療法が若干違います。
また、自分のタイプがどれであるかは、血液検査ですぐにわかります:食事後の血液中の脂肪値は非常に高くなりますから、検査の際に「食後○時間」経っているか、しっかり把握しておきましょう。
なお高脂血症の治療も、やはり食事療法と運動療法から始まります。いきなり薬剤に頼る姿勢は、褒められません。
もともと人間は、加齢とともに少ない食事量で済むようになっていますから、育ち盛りの頃の食事をしていては、長生きできるわけもないのです。聖路加国際病院の日野原医師は、90代でもお元気で現役ですが、ご自身「小食が健康のもと」と言っておられます。
もちろん、コレステロール値や中性脂肪値を下げるための薬剤はあります。しかし、薬物療法に頼れば「薬を止めたら元の木阿弥」です。心しておきましょう。
ところで、高脂血症でも高トリグリセライド血症(上記A)の人は、同時に肥満症でもあるケースが多いので、リスクファクターである肥満症の治療が、高脂血症の治療にも必要です。


◆日本動脈硬化学会では、動脈硬化性疾患診療ガイドライン(2002年版)公表にあたり、理事長および動脈硬化診療・疫学委員会委員長名で、次のような文章を前書きに添えています。
「(前略)…前ガイドラインの内容は、原則的に高コレステロール血症の管理対策に限られ、必ずしも他のリスクの重要性が十分反映されるような指針になっていないことや、薬物療法適応基準を設けたことから薬物治療が安易に行われるおそれがあるなどの問題点も指摘されていた。
そこで、新しく得られたエビデンスをガイドラインに反映するとともに、前ガイドラインの問題点を改善すべく、動脈硬化診療・疫学委員会(馬渕宏委員長)は1999年10月から動脈硬化性疾患診療ガイドラインの設定に関する検討を開始し、計13回の委員会にて討議を重ねるとともに、平成12年日本動脈硬化学会冬季大会のワークショップおよび平成13年同会総会のシンポジウムで中間報告をおこない、会員の意見を集め、さらにe-mail等を介して新たなガイドライン案に対する意見を広く収集した。これらの意見を十分考慮し、また、国外の情勢も参考にして2002年版ガイドラインをまとめ、公表することとなった。本ガイドラインは動脈硬化性疾患を対象に高脂血症診療を中心としたものであるが、改訂にあたっては高脂血症以外の危険因子にも十分に配慮し、それらのリスクが集積されたマルチプルリスクファクター症候群の把握にも重点をおいた。したがって、高脂血症の診断基準値は、あくまでも冠動脈疾患のリスクがある患者を幅広くスクリーニングするための基準値であり、…(後略)」

(「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版発表にあたって」から引用)
参考サイト:動脈硬化性疾患診療ガイドライン(日本動脈硬化学会) http://jas.umin.ac.jp/guideline.html


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